NEGLIA in Tokyo

やまたつくんのトラブルカルテ

経営、ヘルスケアを中心に人生100年時代の生き方に関する情報を発信&子育てネタも少々。

人は思い出を作るために生きているのではないだろうか?

f:id:yamatatsu-kun:20190801084537p:plain

こんにちは、小宮山です。

今回はPIXAR、そうです、トイストーリーを作ってアニメーション映画の世界を変えた会社のストーリーに触れて、とりとめなく筆をとっていく、ちょっと普段とは趣向が違うエントリです。

PIXARは、1995年にトイストーリーを発表して、

  • バグズ・ライフ
  • モンスターズ・インク
  • ファイティング・ニモ

を10年以内に発表し、ディズニー以外は不可能とされていたアニメーション映画で、しかもオールコンピューターグラフィックスのアニメーション映画でメガヒットを連発した会社です。

そんな順風漫歩に思えたPIXARですが、トイストーリーを世に出すまでは、経営が綱渡り状態だったとのこと。

  • 社長であるスティーブ・ジョブズは、アップルを追い出され、当時は「もうヒットを出せない、過去の人」扱い。
  • ピクサーは、そもそもアニメーション映画制作に使える超高性能PC製造会社として、ジョブズがルーカスフィルムから買ったんだけど、肝心のPCはダメダメ。
  • ジョブズの資産、何と500億も突っ込んだものの、1990年代前半は鳴かず飛ばず。資産もゼロになる寸前へ
  • ディズニー映画の制作を請け負っていたが、契約内容は今なら下請法違反になるレベルの超理不尽さ
  • 給料は安いし、未払いも続いていて、従業員とジョブズとの仲は最悪だった

とまあ、こんな感じで倒産寸前。

ですがピクサーには、「世界を変えるアニメーション技術」という種がありました。

そして給料安くて、未払いが続いているにも関わらず技術を信じてついてきた超優秀な従業員たちもいました。

そんな状況でローレンス・レビーという再生請負人がジョブズに一本釣りされて、PIXARを立て直していきます。

この手の「世界を変えるシーズがあるけど、マネタイズが下手なのでビジネスになっていない」って事業にテコ入れして軌道に乗せるのを、バリュー投資と呼んでいます。

一方で、AmazonとかGoogleみたいに既にスゴイものが今後も伸びていくであろうと期待して株を買ったり、入社するのがグロース投資と言います。

バリュー投資はグロース投資よりも激ムズなんですが、成功すれば、お金だけでなく「名誉」も手に入ります。

ドラマになりますからねえ・・・私たちが小さいころから慣れ親しんでいる「少年マンガ」のストーリーも同じですし。

さてPIXARですが、ムリゲーな状況からスパークするために、ローレンス・レビーは4つの戦略を導きます。

それは

  1. ディズニーに映画の制作で得られる収入を、映画の売り上げの10%から50%に引き上げする要求を飲ませる。そのためには、結果を出せるアニメを作れる実績とディズニーに出してもらわなくても困らないだけの軍資金を手に入れる
  2. 映画を自主制作できる資金を調達するために、株式上場を超高値で成功させる
  3. 制作本数を5年に1本から、2年に1本にできるように体制を再構築する。超優秀なアニメーターが多数、雇わなくてはならない。
  4. ピクサーをディズニーの下請けから、世界的なブランドにする。そのためには、結果を出せるアニメを作れる実績を作る

というものでした。

いずれにせよ、「ピクサーには、これだけの価値があるんだよ!」っていうのを世間に納得してもらい、お金を調達しなければどれもこれも不可能な話です。

この目的のためにジョブズとローレンス・レビーは、走り回ります。

バリュー投資系の事業では

  • 美大出身ぽい「こうあるべきでしょ」という熱のあるデザイナー視点
  • 「こうでないと経済合理性の前には成立しない」という冷めた資本主義視点

のバランス感覚が必要です。

デザイナーには、広報スキル、要するに市場への営業スキルも求められますが、ここはやはりジョブズが担当。

経済合理性については、ローレンスが担当することで、ピクサーはやっとのことで資金調達に成功します。

世界中の投資家の目線が面白くって、最初はジョブズのストーリーに魅せられて、「いいね~」っていうものの、いざお金を・・・って話になって精査に入ると、逃げられるってのが多かったそうです。

ここは、やっぱりね・・・って思いました。

だって最初の一本目は、そもそも「実績」が無いですからね。

そこでローレンスが徹底的に「ピクサーは、儲かる確率が極めて高そうです」ってのを示唆するデータを、これでもかってぐらい理詰めで数字にして説明していく。

「ローレンスの経済合理性についての実績がなければ、大物たちはPIXARに投資する、大金を出すという決断なんてしなかった。ジョブズは当時、既に終わった人だと思われてたからね」

っていうキーマンの一言が、全てを表しています。

ジョブズは確かに美的センス、営業&PRスキルの2つは世界屈指ですが、他のスキルは役不足。

なので誰と組むか・・・それが事業の成否を決める大事な要素の一つだったんですね。

そして

スゴイ商品の誕生には、人が想定する以上の時間・・・15~20年はかかるんだ。

どこからともなく登場するように見えるが、その裏には、開発、試験、やり直しなどの長期にわたる繰り返しが隠れているんだよ。

というジョブズのセリフ。

そんな血のにじむような努力と才能を結集させた類まれな商品であっても、

  • ネットバブルという株式公開でビリオネアが出るぐらい、お金がアメリカに集中していたタイミング
  • ジョブズの営業力
  • ローレンスの経済合理性証明力と実績

が揃ってなければ、お金が集まらずにゲームオーバーになっていたという事実。

全てが綱渡り状態・・・つまり、運が絡んでいる。

筆者は、「やっぱりそうなんだ」って思いました。

実は筆者が社内で立ち上げたビジネスも、そうだったから。

  • 今このタイミングでなければ、ダメ。なぜなら、会社の資金体力は無くなっていくのみだから。またチャンスが来るからって意見もあるけど、ホームランを打ちたくても、体力がなければどんなに良いボールが来ても打てなくなる。今しかない。
  • やはり正攻法だと、この商品は市場に出せるのに、100年はかかってしまう。そこを10年に短縮するために、とんでもないリスクを取ったわけだが・・・正しかったのか? 他の会社は、もっと上手にやってるんじゃないか?
  • こんなにも時間と労力を投資してるのに、成功しないんじゃないか・・・? そうなったら、俺のキャリアは終わりだ・・・。
  • 一緒にやってきた創業時の幹部が、PJにとって無視できないマイナスの影響を及ぼすようになってしまったからといって、彼を切り捨てた判断は、正しかったのか? そこまで犠牲を払ってまで、ツライ思いをしてまで、俺がやるべきことなのか?

っていう不安と葛藤に、ずーっと苦しんでいたから。

経営のかなりの部分は、心理戦ですからね・・・やってみて実感したことなんですけども。

自分ではコントロールできない要素に「自分のキャリアとお金すべてを」賭け続けなければならない不安は、想像を絶するものがあります。

そしてエンドロールに名前が載ったときに、ローレンスは号泣したという記述を見つけたら、筆者も泣いてしまいました。

ゲームオーバーになりそうな局面をいくつも乗り越え、同期は出世するのに、自分はあえて蹴って新事業プロジェクトをやることを選んで、今まで自分が費やしてきた、途方もない労力が、ついに報われる瞬間・・・。

一緒にやってきた年上の副官が「ようやく、ここまで来ましたね」って言って、新しい店舗のドアを開けた後、棚に自分が企画・設計・ブランディングした商品が並んでいるのを目の当たりにして、店の中で開店の準備していた裏方を含めた100人ぐらいのメンバーたちが「行きましょう」って声をかけてくれて、他の社員たちは「何が起こるんだ?」っていうまなざしで、わざわざ仕事を止めて、立ち上げの様子をひっきりなしに観に来つづけるという状況・・・。

今までの苦労が走馬灯のように流れてきて、涙が流れるのを止められませんでした・・・いまでも思い出すだけで、涙が出てくる。

その場面にシンクロ・・・やっぱり、大きな額の投資を勝ち取って、事業を立ち上げる人は、そうなんだ、みんな同じ経験するんだ、同じ気持ちになるんだ・・・って。

その後の筆者の事業は、成功を快く思わない社内の刺客たちの手によって、ズッコケさせられ、筆者も連中への対処と事業マネージの負荷が重なることで体を壊してしまい、あっけなく終了しましたが、ピクサーは飛翔することができました。

全てが終わった後、ローレンスは「大変だったけど、いい思い出だった」としみじみと述べています。

人はやっぱり思い出を作るために生きているのではないか・・・と筆者は改めて思いました。

確かにやってるときは苦労ばっかりで胃が痛くなるし、眠れなくなるし、全身に蕁麻疹と帯状疱疹ができるで大変でしたが、終わってしばらく経つと、不思議と良い思い出に変わっています。

もし、自分が出世を捨ててまで「やる」という決断をしていなかったら、事業構築に必要なストーリーテリングも、経済合理性の構築と検証・関係各所、協力会社、お客さんたちへの営業と説明にも携わる機会はなく、なんとも味気ない人生になっていたと思います。

意味のない苦労は避けたほうが良いですが、あとで回収する・できるっていう見込みがあるのなら、自分が持っているキャリアを犠牲にして大きなことに賭けてみたほうが、人生は味わい深く、面白いモノになるなと実感しています。

まあ、負け戦になると選挙と同じように、信じてる人や支持していた人たちが手のひらを返してきて、人間のダークサイドをこれでもかってぐらい見させられるから、重度の人間不信になりますけどね。

おかげで他人に期待することは「全くなくなった」し、属していた会社・組織・町にはもう居たくないし、「またやってよ」と周りに無責任に期待されても絶対に断るってのも「初めての」選挙で落ちた立候補者と同じなんですけど、傷が癒えるとサイヤ人みたく、強くなってるんですよねえ。

また不思議とやってみようかな・・・って気になる。

いつもと違って、感情的で殴り書きのエントリになっちゃいました。

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話